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甲斐 健師; 横谷 明徳*; 藤井 健太郎*; 渡邊 立子*
放射線化学(インターネット), (106), p.21 - 29, 2018/11
放射線によりDNAの数nm以内に複数の損傷部位が生成されると、細胞死や染色体異常のような生物影響が誘発されると考えられている。本稿では、電子線トラックエンドにおいて生成されるDNA損傷が関与する生物影響の誘発について、われわれが進めたシミュレーション研究の成果を解説する。その結果から、1次電子線照射によりDNA鎖切断を含む複数の塩基損傷が1nm以内に密に生成され、その複雑損傷部位から数nm離れた位置に2次電子により塩基損傷が誘発されることが示された。この孤立塩基損傷部位は損傷除去修復が可能であり、結果として鎖切断に変換されるため、1次電子線により生成された鎖切断と合わせ、最終的にDNAの2本鎖切断が生成され得る。この2本鎖切断末端は塩基損傷を含むために修復効率が低下し、未修復・誤修復により染色体異常のような生物影響が誘発されることが推測された。本シミュレーション研究の成果はDNA損傷の推定のみならず放射線物理化学過程が関与する現象の解明にも有益となる。
藤井 健悟*; 越智 康太郎; 大渕 敦司*; 小池 裕也*
Journal of Environmental Management, 217, p.157 - 163, 2018/07
被引用回数:35 パーセンタイル:77.23(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故後、高濃度の放射性セシウムにより汚染された大量の都市ごみ焼却飛灰は、環境回復の観点から大きな問題となっている。本研究では、福島県で採取した都市ごみ焼却飛灰中放射性セシウムの物理化学的特性を、粒形分別と環境省告示第13号試験により評価した。結果から、都市ごみ焼却飛灰中放射性セシウムの放射能濃度とシルバイトなどの共存物質含有量は、都市ごみ焼却飛灰の粒形に応じて変化することが分かった。粉末X線回折分析の結果、水溶性の放射性セシウムはCsClとして存在し、難溶性の放射性セシウムは非晶質物質の内部に結合していることが分かった。
女澤 徹也; 望月 陽人; 宮川 和也; 笹本 広
JAEA-Data/Code 2018-001, 55 Pages, 2018/03
日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町において、深地層の研究施設を活用した地層科学研究および地層処分研究開発を実施している。幌延深地層研究センターでは、地層科学研究の一環として、地下施設内の調査坑道において、岩盤中の地下水の水圧・水質変化の観測を目的として開発された地下水の地球化学モニタリング装置を用い、観測を継続している。本報では、140m調査坑道,250m調査坑道および350m調査坑道に設置された地下水の地球化学モニタリング装置を用い、2017年3月31日(平成28年度末)までに取得した水質(物理化学パラメータ)の測定結果をとりまとめた。
岩瀬 正則*
JNC TJ8400 2000-063, 78 Pages, 2000/03
本研究は、焼却灰を介した溶融金属の酸化反応を制御し、かつそれをスラグ除染に積極的に利用する手段を確立すること最終目的としており、本年は焼却灰の主成分である複数のアルカリ硫酸塩を含む混合溶融塩の物理化学的性質、中でも融体中の酸化物イオンの物理化学的挙動を、溶融塩中のCu2+/Cu+酸化還元平衡によって調査した。2元系、3元系アルカリ金属硫酸塩中のCu2+/Cu+平衡におよぼす諸因子の影響のうち、本年度は特にガス分圧(酸素分圧、SO2分圧)について重点的に調査した。硫酸塩融体中におけるCu2+/Cu+比の酸素分圧、SO2分圧依存の関数形を提示し、その妥当性を熱力学的に検証した。さらに本年度は、高温腐食現象の機構解明の端緒として、複数のアルカリ硫酸塩を含む混合溶融塩中へCr2O3溶解実験を行った。結果から、一定温度および雰囲気において平均イオン半径、換言すれば酸素イオン活量が同じ融体は、同様の酸化物溶解挙動を示すという重要な知見が得られた。
山田 毅*; 新宮 和喜*; 高橋 英一郎*; 中嶋 敏秀*; 山下 貢*; 山本 延彦*; 鈴木 高志*
PNC TJ7187 97-002, 586 Pages, 1997/11
岐阜県土岐市の動力炉・各燃料開発事業団東濃地科学センター土岐分室敷地内において、孔長500mのDH-5号孔が深部地下水調査を目的として掘削された。本報告書は、地表から下部深部までの地質構造、地質環境の有する水理学的・地球化学的特性を把握するため、このDH-5号孔の深部地下水調査結果をまとめたものである。主な調査項目は以下の通りである。1)岩芯の採取・記載2)物理検層(一般検層項目、フローメータ検層、レーダー法シングルホール測定)3)ボアホールテレビ観察4)透水試験(透水試験、揚水試験)5)原位置における物理化学パラメータ測定6)地下水の採水7)地下水の化学分析以上の調査を行った結果、以下のことが明らかになった。・調査区間全体の地質は花崗閃緑岩であり、深度約410mに断層がある。深度約310mよりも深い位置では断層に近づくにつれ風化や変質が激しくなっている。・断層よりも上部では、深度約150m付近に破砕部があり、この付近を境に上下の岩盤で岩相が異なる。・深度約150mから断層までの間には、亀裂沿いに酸化した部分がある。これは地下水の流動を示唆するものであり、フローメータ検層、温度検層で水の流入が確認された。また、この酸化帯付近では透水係数が高く、卓越する亀裂の方向性も破砕部の上部と異なる。・深度323.8330.8mの地下水特性は、物理化学パラメータの測定から還元性で弱アルカリ性である。また、地下水の年代は同位体分析による数十年程度と判定され、水質はCa(HCO3)2型を判断された。
not registered
PNC TJ1545 94-002, 139 Pages, 1994/03
本報告は、環境中での核燃料サイクルに関連した長半減期放射性核種の分析定量法の調査研究を、昨年度に引き続き行った。最近の分析技術の現状調査では、特に63Niと79Seを付け加えた。他の長半減期核種では、昨年度調査報告を補強する形で、トリチウム、プルトニウム、テクネチウム、炭素の4元素について、環境試料での物理・化学形態別分析法に焦点を絞って調査した。また、バックグラウンド値について、トリチウムとプルトニウムについて調査を行った。更に、天然放射性核種については、系列核種間の放射非平衡が常に観測されているので、その原因研究の現状を調査しまとめた。
松本 史朗*
PNC TJ1609 93-002, 14 Pages, 1993/03
多孔質体における気固反応を伴うガス吸着は、排ガス中の環境汚染物質の除去に広く利用されている。被吸着物質は多孔質体における拡散や反応などの複数の移動過程を経て固定化される。多孔質体の細孔構造は吸着速度にもっとも大きな影響を与える因子の一つであり、細孔構造の制御は吸着性能の向上にとって重要である。本研究は、気固反応を伴う多孔質吸着体のガス吸着について、細孔構造のガス吸着性能への影響を評価することを目的としている。ここでは、多孔質体のスチレン-ジビニルベンゼン共重合体(SDB)に硝酸銀を添着した疎水性銀添吸着剤を用いヨウ素、有機ヨウ素の吸着を例として研究を行なった。ヨウ素の除去は初期の段階から重要視され、数々の除去プロセスが検討されてきた。ヨウ素除去プロセスには吸収液を用いる湿式法と吸着剤を用いる乾式法とに大別できる。DOG(溶解オフガス)中にはヨウ素ばかりでなく有機ヨウ素も含まれている為、有機ヨウ素も同時に除去することが必要になる。しかし従来の湿式法では有機ヨウ素の除去は不可能である。そこで乾式法の開発が行われるようになり、銀ゼオライト吸着剤(ゼオライトに銀イオンをイオン交換したもの)が開発された。この吸着剤はヨウ素、有機ヨウ素を効率的に除去できるが、オフガス環境化では銀の利用率が30%と低い値であることに問題点が残った。70年代になると、多孔質の非結晶シリカに硝酸銀を添着した銀添シリカゲル吸着剤が開発された。この吸着剤は、オフガス環境下においても銀利用率90%以上の優れた特性を示し、有機ヨウ素もヨウ素とほぼ同様の性能で除去できるようになった。しかしこの吸着剤は担体が親水性であるために長期間にわたりオフガス中の水蒸気にさらされた場合には、水蒸気の凝縮等によって吸着性能の低下が懸念されている。そこでオフガス中に含まれるNOxや水蒸気によって影響を受けない吸着剤として疎水性のスチレン-ジビニルベンゼン共重合体(SDB)を担体とした吸着剤が用いられるようになった。このスチレン-ジビニルベンゼン共重合体(SDB)に銀を添着した疎水性銀添着剤により、耐水性ばかりでなくオフガス環境でのヨウ素の吸着性能の低下もほぼ妨げられるようになった。
松本 史朗*
PNC TJ1609 91-002, 48 Pages, 1991/03
再処理施設から放出される放射性廃棄物の環境影響評価は、これまでソースターム、放射性物質の環境中での移行等を考慮したモデルによる評価がなされてきた。今後、より現実的な評価を行う観点から、施設から放射性廃棄物の物理・化学形態、また、環境中でのこれら物理・化学形態の変化が、その環境影響評価に与える影響について調査することが必要と考えられる。使用済燃料の再処理において発生する放射性気体には、3H、14C、85Kr、129I、131Iなどの気体状放射性物質が含まれるが、被爆線量当量は129Iが最も大きく、ヨウ素の施設内および環境中での挙動が極めて重要と言える。ヨウ素は軽水炉燃料中ではペレット中にヨウ化物(主にCsI)として均一に分散されていると考えられている。燃料の溶解工程では酸化ウランの硝酸による溶解の際に生成される亜硝酸によって酸化され、I2としてオフガス中に大部分が放出されるが、一部は溶解液中に残存する。残存ヨウ素は共除染工程以後の工程にとり込まれ、有機ヨウ素の形態で槽類オフガス中へ移行すると考えられている。また、高レベル廃液には242Cm、244Cmが含まれていることから、これらの核種は自発核分裂によって131Iを発生する。従って、ヨウ素の除去のみならず、放出時のヨウ素の物理・化学形態を知る上でもヨウ素の再処理プロセス内の挙動を的確につかまえておくことが必要である。本調査研究では再処理施設の工程内を主対象としたヨウ素の挙動について、最近の文献を中心に調査し、その概要をまとめた。また、最近開発された疎水性ヨウ素吸着剤の特徴およびその利用についての考え方をまとめ、ヨウ素の再処理工程内および環境中での物理・化学形態を検討することにする。
成冨 満夫
保健物理, 22, p.189 - 207, 1987/00
放射性ヨウ素の物理的・化学的性状及び挙動の問題は、原子力施設において事故が起こる度毎に提起され、今なお未解決の分野を多くかかえている。その原因は、ヨウ素が種々の酸化状態をとるとともに酸化還元過程において有機ヨウ素を生成する性質をもつため、ヨウ素の物理的・化学的性状及び移行が事故条件によって著しく左右され挙動の工学的定量化を困難にしているためである。本報告は、過去に起こった代表的な原子炉事故(TMI-2,SL-1,Windscale-1及びchrenobyl-4)において、事故時の放出量の大小、放出の時間的推移に放射性ヨウ素の放出機構がどの様に係り、またヨウ素汚染がどんな物理的・化学的性状によって拡がったかについて、破損燃料、一次系内雰囲気、原子炉建家雰囲気及び周辺環境雰囲気の情報を基に解説した。
前川 藤夫; 松田 洋樹; 明午 伸一郎; 佐々 敏信; 宮原 信哉*; 有田 裕二*; 大平 直也*
no journal, ,
加速器駆動核変換システム(ADS)の標的兼冷却材である鉛ビスマス共晶合金(LBE)中の核破砕生成物の物理化学形態評価のため、J-PARCのADSターゲット試験施設(TEF-T)のLBEループについて、PHITSコードにより核破砕生成物量を評価した。
宮原 信哉*; 大平 直也*; 有田 裕二*; 佐々 敏信; 前川 藤夫; 松田 洋樹; 明午 伸一郎
no journal, ,
ADSターゲット試験施設(TEF-T)の鉛ビスマス(LBE)中における代表的な核破砕生成元素を選定し、統合型熱力学計算システムThermo-Calcを用いてLBE中で生成され得るSP元素の化合物とそれらの濃度を1点平衡計算で求めた。